スーパーに並んでいるバナナ。ピカピカすべすべして、とってもきれい。
でもこれは化学薬品のおかげ。
食べる人はあまり安全ではない。
もちろんバナナを作る人も安全でない。
バナナが栽培される場所は何千、何万ヘクタールもあるプランテーション。農薬は空中散布され、収穫後は、屠殺(とさつ)された動物のように吊るされて次の化学薬品による「洗浄」へと向かう。
1999年のコスタリカ国立大学の調査によれば、同国のバナナプランテーションで働く女性は、白血病と先天的欠損症にかかる確率が通常の人より2倍高く、男性は不能になる確立が20%高くなるという。
とってもクリアな黄色。緑色のときに収穫され、輸送中にゆっくり熟成させる。
種類にもよるが、本当はもっと茶色だったり、黒い斑点が付いていたりする。
でも曲がったキュウリが売れない日本だから。重量、サイズ、熟度、形状、虫害の有無が厳重にチェックされ、傷が付かないようにクッション付きのトレーラーで運ばれる。
日本では防疫のためすでに完熟し黄色くなったバナナは輸入できない。ときどきほんの少し腐って検疫でひっかかるバナナが出てくる。そうすると、燻蒸処理といって青酸ガスの一種を塗る。いわゆる推理小説で出てくる青酸カリというもの。 それを食べても心配ないというが、ちょっとこわい。
こうして完成した「高品質」なバナナは、店頭で今日もあなたが連れて行ってくれるのを待っている。
バナナには必ずといっていいほどシールが付いている。小学校の給食のとき、シールが付いているバナナだと「当ったり〜」なんてやったりして(ね?^^;)。
このシールにはさまざまな横文字のブランド名が付いているが、その80%はアメリカの「ビッグ3」と呼ばれる、ドール、チキータ、デルモンテが世界各地に置いたプランテーションから輸出されている。
ビッグ3は日本が大きなバナナ市場になることを見越してフィリピンにも拠点を置いた。(日本企業では住友ブランドのバナンボが1割ほどのシェアを持っている)
これが日本をはじめ先進国の人々の食卓に見られる「ドル・バナナ」といわれるものだ。
▼苦いバナナの過去
バナナは栄養もたっぷり。ある土地では「バナナの生える土地では、人間は飢えることがない」とまで言われている。
ところが、バナナの歴史はかつての植民地支配と深い関係がある。
資源の少ない植民地で、宗主国は自国の利益になる食物を単一的に栽培させた。広い農地を暴力的に確保し、植民地の人々を奴隷のように働かせた。
英語でバナナ・リパブリックといえば、アメリカのファッション店「バナリパ」を思い出す人もいるかもしれないが、辞書をめくれば、軽蔑語で、「バナナなどの単一作物を栽培し、植民地支配を受ける中南米の小国」を意味するのだ。
カリブは欧州に、その他の中南米は主にアメリカのバナナプランテーション支配を受けた。
日本とバナナの関係は1885年に台湾を植民地としたことからはじまった。その農業開発のひとつがバナナであったというわけだ。
現在も輸入される台湾バナナはここに起源を発している。東京オリンピックの前年から輸入制限が緩和されたことにより、それまで贅沢品といわれたバナナも庶民の食べ物になった。
しかし台湾は台風のため生産が安定しなかったこともあり、エクアドル、次第にフィリピンから輸入されるようになった。現在日本に入るバナナの9割はフィリピンからのもの。
▼曲がったバナナ経済
しかしながら「バナナ・リパブリック」はどうやら過去だけのものではなさそうだ。
先進国が経営する大規模バナナプランテーションは中南米、アフリカ、そしてフィリピンにある。
栽培する現地の人々は低賃金で粗悪な労働環境で雇われ、経済的自立はない。毒に奴隷制度に環境破壊、そしてビッグ3は手を組んで、世界のバナナ価格をコントロールし、寡占状態を保っている。
1998年にシンシナティ・インクワイラー誌のある記者が、チキータのこうしたやり方を暴露したところ、チキータ側は訴訟を起こし、結果、雑誌側は屈辱的な謝罪を掲載し、額面非公開の和解金を支払い、記者は解雇の上起訴され、ホームページにあった記事は抹消された。
どうやらだれもビッグ3が牛耳る曲がったバナナ経済を邪魔できそうにない。
2002/09/10
▼カリブのバナナ戦争(US対EU)
バナナをめぐるもうひとつの争いがカリブ地域で巻き起こっている。
かつて同地域を植民地支配していたヨーロッパ諸国は、独立後のカリブ諸国の経済発展を援助する名目で、毎年一定量のバナナを関税なしで買い上げ、カリブのバナナ産業
を保護することを、1975年のロメ協定で取り決めた(中南米の他地域からのバナナには20%の高関税)。
これによりカリブのバナナ生産者は「ドル・バナナ」と比べれば、約2倍の価格で販売することができ、貧しいながらも安定した生活を送ることができた。
だが最近、このバナナ輸入割り当てによる保護政策が2006年までに撤廃されることが決まった。世界のシェア拡大を狙うビッグ3をバックにしたアメリカは、EUがカリブ諸国に対して行っていたその保護政策が、「自由貿易に反する」としてWTO(世界貿易機構)に提訴し、競り勝ったのだ。
ちなみにこの裁定前、EU内で20%のバナナ市場シェアを狙っていたチキータのCEOは、いちはやく当時のクリントン大統領率いる民主党に50万ドル(約6500万円)を寄付していたという。
バナナ産業と政府の結びつきは強い。
保護政策が撤廃される2006年以降、カリブ地域では20万人の小農が生計手段を失うと推測されている。
カリブの国々は極貧国。
現在でもすでに人口の30%は貧困層、失業率は30〜50%に上る。政府予算は緊迫し、社会保障も期待
できない。
この地域の女性は主要な労働力だ。女性が稼ぐ給料は家計のみならず、子供の健康・教育をも支えている。次世代を担う子供への投資が閉ざされれば、ますます貧困の悪循環していくことになりかねない。
カリブのバナナ戦争はグローバル化の代理戦争だ。
そこには大国の利権、貿易ブロック、多国籍企業のパワーポリティクス、農産業の構造支配、小さな島国の経
済の行方が、「自由貿易」の戦利品をめぐって絡み合っている。
そこに、現地の人々の声はあまりに無力だ。
▼フェアトレード・バナナ
はたして、この歪曲したバナナ物語に明るい未来はあるのだろうか。
バナナを買うのをやめようなんてことは言わない。
大規模バナナプランテーションを排除せよとも言わない。
曲がりなりにも、それらプランテーションは貧困国の経済の一端を支えているのだ。
それよりも経営者側がもっと環境や労働環境に配慮した経営をし、一方、消費者はそのように配慮された商品を購入しようとする努力が必要だ。
そこでのキーワードは「フェアトレード」と「オーガニック(低(無)農薬)」。
幸運なことに、国際NGOの圧力により、ビッグ3は最近ようやく重たい腰を上げた。
デルモンテは1999年に環境に配慮したISOを取得し、チキータは2000年11月からNGOと提携して「Better
Banana Project」を立ち上げ、
環境と労働環境の向上に20万ドルを投資することを決めた。
ドールは01年1月現在、利益の25%をオーガニックのバナナから得るまでになっているという。
こうした努力は評価すべきだ。
が、依然ドル・バナナが世界市場を寡占し、途上国の経済的自立を妨害していることに変わりはない。
また、これら環境対策が単
なる企業のイメージアップに過ぎない、という批判的な声も聞かれる。
そこで、中間マージンを極力なくし、地元生産者から直接バナナを買い上げるフェアトレードが欧州などで少しずつ市場を伸ばしている。
フェアトレードとは
「公正な貿易 fair trade」という意味で、「自由貿易 free trade」に対して
造られた言葉である。
公正な値段で買い上げるだけでなく、プロジェクトによっては技術指導や教育も行い、自立した農業経営を助けている。
農薬を使わないオーガニック・バナナも大切だ。だが、オーガニックはフェアトレードと結びついてはじめて意義がある。オーガニックのみを強調することは、先進国の健康ブーム、環境に対する自己満足で終わってしまう可能性があるからだ。
日本でも最近では無農薬、低農薬バナナが店頭に数多く並んでいるが、フェアトレードにはまだ関心が向けられていないように思える。
ビッグ3も加盟する「日本バナナ輸入組合」のホームページにも、バナナに関する役に立つ情報は満載なものの、それらがだれによって、どのように生産されているかには一切語られていない。
http://www.banana.co.jp/
今手元にある情報の中で、オーガニックとフェアトレードの双方を満たしたバナナを扱っているのは、「オルター・トレード・ジャパン(ATJ)」と「らでぃ
っしゅぼーや」のみ。
(他にありましたら、情報をお願いします m(_ _)m)
オルター・トレード・ジャパン http://www.altertrade.co.jp/
らでぃっしゅぼーや
http://www.radishbo-ya.co.jp/
また、日本産の島バナナなどを食べるのもいいかもしれない。
フェアトレードといえども、バナナを海外から輸送するのには大量のエネルギーを消費している。
地域のものをその地域で食べることは、循環型の社会を築くためにも大切だ。
あなたがスーパーで見事なまでにきれいな黄色の皮と、それに貼ってあるシールを見たとき、それが世界を巻き込むバナナ戦争の証だと思い出してほしい。
=おわり=
◎References:
--CORPORATE FOCUS:
The New Banana Republic http://www.alternet.org/story.html?StoryID=1922
--Green bananas (1999 Summer) [Earth Island Journal], vol:14, page: 48
--U.S. and Europeans agree on deal to end Banana Trade War (2001 April
12). [New York Times] page:C1
--An unappeeling industry (2002 April)
[The Ecologist] vol:32, page:40
--Finance and economics: A fruity peace
(2001, April 21) [The Economist] vol:359, page:68
--The big banana split
(1999 October) [The New Internationalist]
この改行は必要→
みんな大好きなバナナ。世界でもっともポピュラーなくだもの。食べ物全体で見ても、米、小麦、トウモロコシに次いで世界で4番目にポピュラー。そう、バナナを征するものは世界を征する─。