日本人が発明し、すっかりおなじみの割りばし。
でも割りばしって、環境に悪い? それとも良い?
あなたは割りばしを使う? それとも使わない?
その答えを出す前に、もう一度割りばしについてよく考えてみよう。
割りばしからいろいろなものが見えてくるはず…
でも割りばしって、環境に悪い? それとも良い?
あなたは割りばしを使う? それとも使わない?
その答えを出す前に、もう一度割りばしについてよく考えてみよう。
割りばしからいろいろなものが見えてくるはず…
▼割りばしって悪い?
割りばしは悪い?
そうかもしれない。
確かに割りばしって便利。衛生的で、洗浄不要だから洗浄にかかる水代や人件費も節約できる。一番安いもので一膳60銭。一日に客が1000人来たって、600円以下。それに、ラーメンなんか食べるときは、塗りばしより滑らないし、つかみやすい。
でも、日本では年間270億膳が使用されている。毎年一人200膳の計算。みなさんはどのくらい使っているだろうか。その分、大量の木材資源を消費しているのだから。
使い捨てのライフスタイルのシンボルともいえるかもしれない。
それに、体にも悪いらしい。とくに中国から輸入された竹ばしなんかは漂白剤や防カビ剤を使っていて、呼吸系の障害や胃腸炎を引き起こす恐れがある。テレビニュースでは、竹ばしを入れた水槽に金魚を入れておいたら、一週間で死んでしまったというのを紹介。
「日本人の健康より、コスト第一主義というのが許せない。それがまた日本産の割りばしを圧迫し、衰退させてきた」
そう語るのは、国産の割りばしを扱う老舗、箸勝本店の社長、山本権之兵衛さん。
現在、割りばし生産の9割以上を海外からの輸入に頼っている。輸入割りばしに押され、国内の産地は大変だ。
国内生産量は10年前に比べて5分の1にまで減少。2005年現在、国内生産量は4.5億膳に対し、輸入量は254億膳。その差56倍。
▼割りばしって良い?
でも割りばしって良いこともある。
そもそも割りばしというのは、あまり利用されない木材を「リサイクル」する目的で作られた。
一本一本の木に太陽の光があたって、健康な森にするために、人の手で木やその枝を切って間引いてやらなければならない。そこで出てきたものを「間伐材」という。また木材を切ったあとに出る余り、「端材」もある。
そうしたいわば「余り」を有効利用して、割りばしが作られた。そして、割りばしで得た利益で、植林をするというような循環ができていた。
つまり、割りばしを使うことで、まっすぐな木が育ち、森が元気でいられる。かつてはこうして環境と経済とが両立していた。今でいえば「もったいない」の精神がうまく生かされていたのである。
それが今では海外の割りばしがほとんどになり、日本産のものは一本数十円もする高級品しか売れなくなってしまった。
それにつれて林業全体が衰退し、森林管理も維持できず、森は荒れていく。
ここ過去25年で国内スギ丸太の値段は3分の1にまで減り、木材自給率は2割以下になってしまった。
▼割りばし戦争
いったいどうしてこんなことになってしまったのだろうか。これを理解するには、もう少し日本と中国の関係を考えていく必要がありそうだ。
近年、割りばしの国内消費量そのもののはあまり変わっていない一方で、海外からの輸入量が激増してきた。
この背景として、1980年代からファーストフードや弁当屋が増えてきたことが関係しているようだ。大量に安い割りばしが必要になって、大手商社が海外での割りばし製造に目をつけた。
中国をはじめ、インドネシア、カナダ、南アフリカなども競争に参加。しかし最終的に市場競争を勝ち抜いたのは中国だった。木材も人件費も安く(日本の5分の1)、中国政府も工場に出資するなど援助したからだ。
今では輸入の99.7%が中国からになっている。
苦境に追い込まれた国内の割りばし産業は、日本政府にお願いをした。
「中国からの割りばしに対して関税を高くしてください」と。
しかし、日本政府が行ったのは、関税の「引き上げ」ではなく、その逆の「引き下げ」だった。日本政府は「自由貿易を促進する」立場をとったのだ。
「国内産業保護」か「自由貿易」か──。そんな衝突も見てとれる。
結局、1991年、割りばしの関税は5.2%から4.7%に下がり、割りばしの輸入に歯止めはかからなかった。
▼日本の割りばし輸入が中国の森を食い荒らす!?
中国からの割りばし輸入には、さらに大きい問題があった。それは、日本が間伐材などを「リサイクル」して割りばしを作っているのに対して、中国では木をまるごと一本切り倒す「皆伐」という方式がとられている。そして木を切り倒したあとは農業用に使われ、森林は戻ってこない。中国では伐採したあとは、必ず植林しなければならないという法律を出したが、ほとんど効果はなかった。
「日本の割りばし輸入が中国の森を食い荒らす」──。中国の新聞の見出しが言う。
「日本の国土に占める森林率は65%。それなのに割りばしをすべて輸入に頼っている。中国は17%、しかし最大の割りばし輸出国になっている」
中国では森林破壊が問題になっている。また森林破壊が洪水や黄砂を引き起こしている。1998年の中国での大洪水の際、中国の高官は日本を非難して同様の台詞を言っている。洪水が起こったのは森林破壊のせい、森林破壊が起こったのは、日本のせい、というわけだ。
しかし残念だが、それは言いすぎのようだ。
「割りばしは中国の木材需要の0・2%にすぎない」──。そう反論するのは、日本割箸輸入協会。
それに、中国国内だけでも450億膳が消費されている。中国は生産、消費、輸出量ともに、世界トップなのだ。だから日本だけの責任ではない。
とはいうものの、森林資源豊かな日本が、森林資源に貧しい中国から、割りばしを輸入するというのは、やはりアンバランスで、非難の対象となるのも無理はないというものだ。
また、日本は割りばし輸入の代わりに、「割りばし文化」を「使い捨て文化」として輸出してしまったのかもしれない。1980年代には上海などでしか見られなかった割りばしが、今では中国でもすっかりおなじみになっている。
中国の掲示板サイトで「割りばしは環境にいいか、悪いか」という質問に対し、ほぼ全員の回答が「使い捨てだから、環境に悪い」という答えになっていた。
こうした中、最近、中国の割りばしに関するニュースが相次いで報道された。その中で最もショッキングなのが、「中国産割りばし、対日輸出2008年にも停止」という見出しである。
中国政府は国内の森林保護との名目で、今後段階的に日本への輸出を減らす方針だ。また中国は割りばしに対し30%の値上げをし、国内に対しては割りばしに税金をかけ始めた。割りばし包囲網は強まりつつある。
今後ひょっとしたら、割りばしが使えなくなってしまうかもしれない。少なくとも「割りばし=無料」という時代ではなくなるかもしれない。
▼5円で森を育てる
それじゃ、どうしたらいいだろう。
すでにいろいろな対策や運動が行われている。
まず割りばしの使用そのものを減らそうという運動ははじまっている。
最近ではコンビニでお弁当などを買うとき、よく「割りばしをお入れしますか」と聞かれることが多くなった。
コンビニの「ミニストップ」の一部店舗では、割りばし発祥の地、奈良・吉野ヒノキを使った国産割りばしを一膳5円で販売している。はし袋には「あなたの5円でいっしょに森を育てませんか」と書いてあり、割りばしだけを買う人もいるという。
NPO団体「樹恩ネットワーク」では8年前から徳島県・埼玉県産の割りばしを販売していて、今年から群馬県産の販売も開始した。発売先は学生生協食堂。学生の環境保護の意識も高まり、発売当時の3倍売れているという。
レストランに自分のはしをもっていく「持ちばし運動」も流行している。「マイ箸クラブ」というウェブ上のネットワークもある。
その他、使ったあとのはしを紙にリサイクルしたり、木炭に加工したり、プラスチックのはしを洗ったりして使う、という道もある。
(※ただ「はしを洗う」というのは、一方で水をそれだけ消費したり、洗剤などで水を汚したりするので、「割りばし」と「洗いばし」のどちらが環境にいいかは言い切れない。ご存知の方がいたら、お教えください)
一方、日本の商社などの間では、中国以外の輸入ルートを探している。ベトナムやロシアなどだ。しかし中国で犯した過ちを、ベトナムやロシアへも輸出してしまうのだろうか。
▼「使うor使わない」から卒業
中国からの輸出停止はピンチではなく、チャンスだ。
環境保護のことを考えるだけでなく、国内林業を育てるためのいい機会だ。
日本の森林資源はすでに復活しつつある。日本の国土の3分の2は森に覆われている。林野庁の報告によれば、この過去40年間、日本国内の森林全体の全体はほとんど変わりはないものの、2004年現在の森林「蓄積」面積は40億立方メートルで、人工林を中心に毎年約7千万立方メートルずつ増加している。「蓄積」というのは、立木の幹部分の体積で、これが増えるということは、樹木が育っているということを示す。それに、一部の森林は間伐ではなく、皆伐もできるまでに成長してきている。
つまり、日本の森林はすでに「保護」の対象ではなく、「利用」のときに来ているのだ。
割りばしを割ると、そこからいろんな声が聞こえてくる。大量消費と使い捨てのライフスタイル、中国の森林破壊と洪水や黄砂、国内林業の危機、貿易自由化の弊害などなど。問題は複雑。
もう、割りばしを「使う」「使わない」の二択から卒業しなければならない。割りばしを割っても、経済と環境を割って考えてはいけない。どちらも大切だ。
■References:
●割り箸から見た環境問題(環境三四郎)
http://www.sanshiro.ne.jp/activity/99/k01/6_18prs1.htm
●Life-Cycle Studies: Chopstickes (World Watch, Jan, Feb, 2006)
●割りばしで森を育てよう(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/
20060901gr02.htm
●割りばし/地球の荒廃がみえてくる(神戸新聞)
http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/0000093566.shtml
●中国産割りばし、対日輸出2008年にも停止(日経新聞)
http://www.nikkei.co.jp/china/news/
20060413d1d1205512.html
●日本の森林蓄積の変化(みんなの森・データ編)
http://www.minnanomori.com/work/w_info02/
w_graph204/w_frame204.html
●第7章 農林水産業(総務省・統計局)
http://www.stat.go.jp/data/nihon/07.htm
●割りばしに係る監視強化について(厚生労働省・食品保健部監視安全課)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/01/h0121-1.html
●薬漬け輸入割りばしが森林を破壊する!(新日本婦人の会)
http://www.shinfujin.gr.jp/b_category/files/lif_04-24.html
●マイ箸クラブ
http://mother-earth.jp/myhashi/
●財経報道特集:割り箸が引き起こす「大戦」(大洋網)[中国語]
http://finance.dayoo.com/gb/content/2006-05/25/
content_2517883.htm
●割りばしは環境に良い?悪い?(百度知道)[中国語]
http://zhidao.baidu.com/question/13094907.html
この改行は必要→
日本と中国の環境問題と経済関係が見える