宗教や民族の歴史的対立が原因じゃない
内戦

2003/05/26

 

民族と宗教の対立じゃ語れない


 今日は「内戦」についてです。
 
 1960年から1999年までの間に、世界では主に52もの内戦がありました。

 コンゴ、アンゴラ、コロンビアの内戦なんて、なんとなくニュースで聞いたことありますよね? アフガニスタンも長い間内戦に苦しんできました。


 それではみなさんに質問です。


 じゃあ、これらの内戦って何が原因で起きてると思いますか?

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 多くの歴史学者は、何百年も前の歴史に焦点を当てます。何世紀も続いてきた民族、部族、宗教の確執が、内戦の原因なんだと言います。

 記憶に新しいアフガニスタンの内戦でも、○○人とか△△人、とか今まで聞いたこともない横文字の民族の名前がたくさん出てきましたよね。コンゴでは、同じ民族でも、さらに小さい単位の部族間で争いあっています。


 でも今回は、そんな歴史や民族の名前なんかイチイチ覚えてなくても大丈夫ですよ ^-^

 ただひとつだけ、以下のことを、頭の隅に置いておいていただければ今回はOK!!!


【内戦を考える上で重要なのは、歴史上の対立ではなく、お金(経済)である】




▼多民族国家は内戦が起こりにくい


 それでは、まずは民族・宗教の対立について考えみましょう。

 内戦が行われている国を見ると、確かに民族間、あるいは宗教間で争っていることは多いですよね。

 しかし実は、民族や宗教によって「色分け」されているだけであって、民族・宗教の対立が直接の「原因」となっているとは限らないんです。

 どういうことかというと、

 軍を率いるリーダーは、自分たちのメンバーを団結させなければなりません。
 または豊かな国に移住、または避難したお金持ちの同朋から資金を集めたいと思っています。

 そんなときに、何百年も前の歴史を持ちだして、自らの民族、宗教の優位性、正当性を訴え、団結をはかるんです。


 つまり、対立が先か。団結が先かということですね。


 あるリサーチによると、民族や宗教が多様な国ほど、紛争は起きにくい、といいます。



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 たとえば、アフリカ・マダカスカル島の南西のモーリシャスという国。

 民族的には、インド系が中心ですが、アフリカ系、中国系、さらには、ヨーロッパ系の人々がモーリシャス人として生活しています。

 ヒンズー教、イスラム教、キリスト教と、宗教も多様で、小さいながらも多民族な国家。

 けれど、この国ではお互いの民族、宗教、文化を認め合い、貧しいながらに平和に暮らしています。

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 ただひとつ重要な例外は、あるひとつの民族が圧倒的な人口を占めていて、その一方で、少数民族がいるとき。

 こういう状況では、マジョリティーの民族が少数民族を迫害、または少数民族が反乱を起こしたりと、紛争の確率が2倍になるといいます。



▼ 民主国家も独裁国家も内戦の発生危険度は同じ


 「民主的な国では内戦が起きにくい」──。

 一見すると、そんな感じがしますよね? 

 しかし残念ながら、少なくとも貧しい国々では、その言葉は当てはまりそうにありません。

 独裁国家は民主国家と比べて、内戦の起こる確率はほぼ変わりありません

 それよりも、注意すべきは、民主国家と独裁国家の中間点にある国。新しく民主的な国家になったばかりの国が、危険な状態にあるということです。

 たとえば2000年にようやく民主的な大統領選挙を行うことになったコートジボアールは、選挙をめぐって争いが起きて、現在も続いています。

 新しく独立したばかりの東チモールでも、内戦が起きてしまっていますよね。



▼ 内戦は繰り返される


 内戦が起こるたび、多くの解説者は、太古の昔からの歴史の対立を持ち出してきました。


 でも、大切なのは太古の歴史ではありません。【「最近の」歴史】です。


 最近内戦を経験した国ほど、再び内戦を起こす確率が格段に高くなるという傾向にあります。

 たとえ内戦から立ち直ったとしても、政治機関が貧弱だから、国をまとめることができない。

 元気がみなぎる若者たちの未来は、働くことによってあるのに、経済が悪ければ、戦いさえすれば飯が食える内戦に再び傾いてしまうかもしれません。

 


 
 それじゃ、いったい何が内戦の原因なんでしょう?

 文頭でも言ったけれど、どうやら【お金】が関係するらしいですよ。

 どういうことでしょう?
 
 それでは、次回をお楽しみに!!



2003/05/26

お金で買える お金が変える


  
 前回は内戦の原因が、何百年もの歴史に根付く民族や宗教の対立じゃないんだよっていう話をしました。

 それに太古の歴史よりは、「最近の歴史」に注目しましょうとも、書きましたね。つまり、最近内戦を経験した国ほど、再び内戦に陥りやすい、ということでした。


 それでは、今回は、「じゃ 本当は何が原因なの?」ということをみなさんといっしょに考えていきたいと思います。

 ヒントは前回の最後に言った【お金】です。



▼豊かな国では内戦が起きない


 それでは早速。まずは、これから考えてみましょう。

 お金持ちな国ほど、内戦は起きにくい……。

 世界の人口は60億人。そのうち、まず先進国の人口、9億人はお金持ちですね。日本やアメリカやイギリス、フランス、カナダ……。

 これらの国では内戦なんてありませんよね。


 次にこれに加えて、グローバル経済の波に乗って発展してきている、比較的豊かな途上国というのも、内戦にはあまり縁がありません。このグループに属する人口は、約40億人。


 さて、残りの11億人の貧しい国々。
 内戦はこれらの国に徹底的に集中しています。

 どうですか みなさん?
 内戦やってる国って、なんだか貧困にも苦しんでいるような気がしませんか? コロンビア、アンゴラ、コンゴ……。 

 貧しい上に、さらに戦争で荒廃したら、ますます貧しくなってしまいます。

 ある統計によると、経済成長率が1%上がるごとに、紛争の起こる確率は1%下がるそうです。また、個人の所得が2倍になると、紛争の起こる確率は半分になります。

 言葉を変えれば、紛争は、経済が危機状態のときに起こりやすいということです。たとえば、インドネシアでは、90年代後半のアジア経済危機に呼応したかのように、内戦が発生しました。

 戦争などしているから貧しくなってしまうのか? 
 それとも、貧しいがゆえに戦争をするのか?

 はっきりとした理由はわかりません。しかし、貧しい国ほど、内戦に直面する確率が高いのは間違いなさそうです。
 


▼内戦のお友達─ダイヤモンド


 もうひとつ興味深いことがあります。

 それは、内戦に直面している国の多くは、ダイヤモンド、石油、森林など資源が豊富だということです。

 紛争を続ける多くグループは、そういった自然資源から、武器、そのほか、戦いに必要な資金を手に入れます。


 たとえば、

 ・アンゴラの反政府組織UNITA、
 ・シエラレオネのRUF

 なんかはダイヤモンドの例です。

 ・カンボジアのクメルルージュ

 は、木材が資金源。
          (※ここに挙げた反政府組織は、今はすでに崩壊状態)


 もっと間接的な方法としては、そうした鉱物資源で商売をしている先進国企業の現地従業員を誘拐して、「身代金」を手に入れるっていう手もあります!

 (余談ですが、こうした被害を受ける企業の中には、この「身代金」を「地域社会貢献費」として、あらかじめ会社経費に組み込んでいるところもあります^^;)


 また、ひとたび、ある鉱物資源がある地域に発見されると、その地域の人々は経済的に自立できるくらい裕福になる可能性があるから、ついでに政治的にも自立したくなります。

 つまり「分離(独立)」したくなっちゃうわけです。

 でも、ほとんどの国って、いろんな民族が住んでいますよね。そこで、鉱物が発見された地域が、少数民族の地域だったりすると、民族主義を唱える中央政府は、力ずくでも、その富を奪おうとします。

 そうすると、そこに少数民族と中央政府が資源の取り合いで紛争が起きることになります。


▼ミニケーススタディー─インドネシア

 このいい例がインドネシアの独立問題として、東チモールともうひとつあげらている、アチェです。

 東チモールとアチェの違いは、スバリ、アチェはとても石油や天然ガスが豊富であるということです。

 だからインドネシア政府は、東チモールは国際的な圧力もあって手放しても、アチェは絶対に手放さないといわれています。

 インドネシア政府は今まで、アチェでの資源を搾取して、アチェの地域社会にはほとんど還元してきませんでした。これが、アチェの人々の長い間の不満となっていました。これが分離運動のエネルギーです。


 見事に独立を果たした東チモールについても、その資源の利害関係から見ることによって、「独立」ってどういうものか、もう一度考えてみたいですね。

 オーストラリアは世界の先頭になって、東チモールの独立を支援しましたが、独立のわずか数時間後、両国の首相は協定を交わしました。そこで、オーストラリアは、東チモールの海洋油田発掘の権利を手に入れました。

 つまり、オーストラリアは、東チモールの石油目当てに、独立を支援したといえなくもないということです。


★次回へ続く

 さて、今日は「内戦の原因は何か?」ということでしたね。

 その答えは、お金、より具体的に経済と資源が深く関わってるんだよってことでしたね。

 でも、解説だけで終わっては意味がありません。 

 大切なのは、これまで述べてきたことから、私たちは何を教訓として学び、今後内戦を無くすために何をすべきかということです。

 このへんを次回に話して、終わりにしたいと思います。

 それでは、また次回、お会いしましょう ^0^/

 



06/06/2003


じゃあ、どうするの?


  
 今日は「内戦」シリーズの最終回です。
 前回は、内戦っていうものが、経済や資源といった「お金」にからんでいるんだよ、ということを話しましたね。
 
 豊かな国では内戦は起きない。内戦は途上国に集中している。

 ダイヤモンドといった鉱物資源、木材や麻薬なんてのも、反政府組織の資金源になっているということでした。


 それでは、今回は、どうしたら、内戦をなくし、防ぐことができるのか?
 
 あなたはどう思いますか?



▼じゃあ、どうするの?


 「内戦の原因は何か?」と、解説だけで終わっては意味がありません。 

 大切なのは、これまで述べてきたことから、私たちは何を教訓として学び、今後内戦を無くすために何がすべきかということです。

 まず、教訓とは、何が原因で内戦が起きたかより、金銭的に内戦を続けられるかということのほうが重要だということ。

 つまり、内戦は、戦いを起こしたい組織が、金銭的に軍事力を持続できてはじめて起こるものだからです。

 だから、国際社会は、こうした(主に)反政府組織に対し、道義的に間違っていると非難するよりも、まずは軍事力の持続性を経済的に削ぐことに力を注がなくてはならないでしょう。


 不正なお金の流れを断とうということ。



▼紛争ダイヤモンドを撲滅せよ!


 まずは資金源となっている自然資源の取引を監視しましょう。

 実際こうした監視活動は、今までに行われていて、いくらか成果を見せ始めています。


 アンゴラのUNITAやシエラレオネのRUFは、最近壊滅しましたが、これには国際的なダイヤモンド取引監視による経済制裁がある程度功を奏したといわれています。


 現在では、こうした取引監視を包括的にしようと、キンバリー・プロセス(Kimberley Process)というものが進められています。

 これは、ダイヤモンド原石に原産地証明をつけましょうというもの。
 
 紛争地域から産出されたものは取引を禁止しようという動きです。



※参考:「紛争ダイヤモンド」
http://www.ochanoma.info/sc_diamond.html



 だから、ダイヤモンドを奥さん・彼女にプレゼントする貴男!

 宝石店で、原産地証明が付いているか確かめましょうね^0^/




▼ コロンビアの内戦に油を注ぐアメリカ



 また、麻薬なんてものも、反政府組織の資金源になっています。
 この流れも断たなければいけません。


 世界の麻薬の実に95%が、内戦地域で生産されているんですよ!


 それに、他国の政府が、内戦中の反政府組織に資金援助しているなんてこともあります。こういった援助も、しっかり罰せられなくてはなりません。



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 麻薬といえば、前回の『本当の母の日』でも書きましたが、カーネーションと麻薬の国コロンビアです。

 ここでは、アメリカ政府は、反政府組織を撲滅させるために、コロンビア政府に武器を援助しています。

 一方、反政府組織は麻薬を栽培、密輸して、武器の資金源としているのですが、その麻薬の多くはアメリカ市民によって消費されているのです。

 つまりですねぇ、アメリカは政府と反政府組織の双方に軍事援助をしていることになります。

 だから、内戦を止めさせるために、アメリカ政府は軍事援助をしています
 が、実際は、ますますコロンビアの内戦に油を注いでいることになります。


 だから、アメリカ政府は、コロンビア政府に軍事援助するお金があったら、コロンビアの貧しい人々に、麻薬以外の商品作物を栽培できるように援助をすればいいんです。

 貧しい人々は、貧しいがゆえに、仕方なくお金になる麻薬を栽培しているんです。だから、貧しい人を救わずに、コロンビアの内戦を止めることはできないのです。

 そもそもコロンビアの内戦は、貧しい農民たちが立ち上がって、政府に抵抗運動を始めたことに端を発しているのですから、反政府組織が悪いと決めること自体が間違っているんですけど。

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▼ 経済援助はタイミングよく



 貧しい国ほど、内戦が起きやすいということを、言いましたよね。

 では、ここからどんな内戦の抑止の方法が考えられるでしょうか?



 そうですね。これまで以上に途上国に対して、経済援助を行うことです。

 市場を育てる手伝いをし、借金を帳消しにして、資金援助もしましょう。
 この辺は今日は深くは書きません。



 経済援助の内容もさることながら、【時期】はもっと重要です。



 内戦から立ち直り、新しく民主的な国家を築き始めている国ほど、再び内戦に陥りやすいとも言いました。

 この時期の政府は貧弱で、財政機関もしっかりしていないから、せっかくもらった援助資金を有効に生かすことができません。


 残念ながら、現在の経済援助はどうもタイミングが悪いんです。


 平和が訪れ、メディアでも注目されている最初の1年くらいは、世界的な援助が集中します。けれど、そのときは、ちょうどお金を運用できるほど、政治の仕組みがきちんとしていないとき。

 そして、ある程度国が安定してきたときには、すでに関心が薄れ援助が去ってしまっているのです。一番必要なときに、お金がないのです。



▼ 平和維持軍は必要?



 最後に、内戦の再発を防ぐためには、国連などによる外部からの軍隊が介入する必要があると思います。

 これはもちろん軍事的な意味もあるけれど、内戦から回復したての国にとって、自分たちで治安を守るための軍事費を捻出するのは、大変な負担になるからです。だから、「外部からの」というのがポイントです。

 しかし、外部の軍隊は、いつまでも滞在することはできません。ある程度、治安が回復して、政府機関がしっかりしてきたら、撤退します。

 安定してきたそのとき、上に述べたように、経済援助がますます必要になるのです。






 今回のシリーズでは、「お金」にスポットを当てて、内戦というものを考えてみました。

 最も強調したかったのは、内戦が宗教や民族による対立が直接の原因ではないということです。


 【歴史は過去のことであり、私たちには変えることができません】


 歴史が内戦の原因なら、私たちには、内戦を止めることなどできないのです。


 

 =おわり


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