最も平均寿命の短い国より愛を込めて
紛争ダイヤモンド

2001/11/14

 

▼世界で一番平均寿命の短い国

西アフリカの小さな国、シエラレオネ。人口は約500万人、東京の人口の約半分。このシエラレオネ、なんと平均寿命が世界で一番短いという記録を持っている。
(男:32.95歳, 女:35.90歳、1995年)

SRALEONE.GIFシエラレオネでは、内戦が10年以上続き、これにより5万人が命を落とし、1万人が手や足を切断され、100万人の人々がホームレスとなっているといわれている。

首都はフリータウン。もともとはポルトガルの影響下だったが、大英帝国の時代の1880年以後には、イギリスから「解放奴隷」約5万人が現在のフリータウンに移住し、イギリスの統治が強まった。

第二次世界大戦後、各地で独立の気運が高まると、シエラレオネもほかのアフリカの国にならって独立したが、政権は先住民が握り、解放奴隷を祖先に持つ者は疎外されたため、対立が発生。一応、この民族対立が今の紛争の遠因となっているといわれる。

現在は政府と反政府ゲリラの国民統一戦線(RUF)の戦いが断続的に続き、今でも解決の糸口は見えていない。


▼日本から遠い国?


日本からは遠く離れた国で、日本のメディアではあまり取り上げられることが少ない。が、今年5月にはシエラレオネで国連平和維持活動(PKO)に従事している国連シエラレオネ派遣団(UNAMSIL)の事務総長特別副代表上級顧問に、伊勢崎賢治氏(43)が就任し、アフリカでのPKOの要職に日本人としては初めて任命された。

日本からは遠く離れた、小さな国であるが、どんな小さな国でも、やはり平和は望まれる。

また、シエラレオネといって必ずというほど出てくるのがダイヤモンド。結婚指輪は給料の3ヶ月分^^;とCMに出てくるほど、日本は大きなダイヤモンドマーケット。

というのも、ダイヤモンドは反政府ゲリラ・RUFの主要な財源となっていて、俗に"Conflict Diamonds(紛争ダイヤモンド)"といわれているのだ。

シエラレオネの内戦を見ている限り、民族の恨みだけが対立の原因ではなく、民族対立にかこつけて、誰かが利権を争っているように思える。



 
2001/11/17

 ▼流れ続ける「血塗られたダイヤ」



シエラレオネの反政府ゲリラ組織RUFは、隣国リベリアでゲリラの特訓を受け、その代わり、リベリアはシエラレオネのダイヤモンドを独占して買い上げ、世界のマーケットに向けてそれを売却、大きな財源とする。と、このようなギブ・アンド・テイクの関係が両国の間で成り立っているのだ。

紛争ダイアモンドの流通を止めようと国連は、リベリアに制裁を行い、国連メンバーはリベリアからダイヤを購入することを禁止された。

ところが、実際のところ、リベリアからは依然ダイヤが世界に流れ続けているという。



▼ダイヤを見たこともない人々


シエラレオネは本来とても鉱物資源が豊富な国。だから、その資源が有効に国の開発に生かされれば、豊かな国になる可能性は十分にある。ところが、このダイヤから得た富を手に入れられる人はわずかしかいない。大部分の人々はダイヤを見たこともないのだ。お金はみな戦争のために吸い取られ、経済の投資に回されることはない。

シエラレオネは平均寿命が世界で一番短く、その上、貧富の差も最も悪く、国連による人間開発指標(HDI)でも過去数年間、最低レベルに位置している。RUFの破壊活動によって住む所を破壊され、人口の7割にあたる約450万人もの人々が故郷から逃げ出し、難民として不安定な生活を続けている

難民、失業、麻薬の乱用、小型兵器の蔓延に加え、人権侵害も指摘されている。若者、しばしば子供が、軍隊へ強制的に徴兵される。日本では小学生ほどの年齢の子供が兵士として、誘拐、脅迫、暴力されるケースもある。

難民女性への虐待やレイプは日常的。選挙の投票を阻止するため、RUFは「みせしめ」として手足を切断したりする。

国際人権保護団体アムネスティのサリル・トリパシ氏は、「富裕国の若い女性が買った指輪のせいで、シエラレオネでは女性1人の手足が切り落とされているかもしれない」と話す。

ロンドンの環境・人権保護団体「グローバル・ウィットネス」のアレックス・ヤースリー氏は、「手足を切断された市民たちは、米の収穫作業ができなくなり、食糧をRUFに頼るようになる。シエラレオネ国軍も食糧の道を絶たれ、国全体が飢餓のために不安定化する。RUFはそれを狙っているのです」と説明する。



▼リベリアは「悪者」?



ダイヤ取引で私腹を肥やしているように見えるリベリアでも、一般住民は10年近く続く内戦のために苦しい生活を強いられている。かつて鉄鉱石・天然ゴムの輸出はアフリカ屈指だったが、長年の内戦のため、今では経済は壊滅状態。99年3月の時点で、35万人の国外避難民が存在する。

リベリアの林業は紛争ダイヤと密接な関係がある。不法に伐採された木材の輸出が汚職政府の財源となっていることに加え、伐採によってできた道路は武器と紛争ダイヤの輸送をますます助長する。

また、木材を加工する産業が皆無に等しいリベリアでは、丸太がそのまま輸出されるため、人々からさらに雇用の機会を奪っている。

リベリアのForestry Departmentによると、2000年の前半期に伐採された森林面積(不法の伐採は含まず!)は過去4年分を合計したものを上回るという。この調子でいけば、リベリアで商業価値のある森林はあと10年で消滅してしまうだろうと警告しているが、この数字も不法に伐採されたものは含んでいない。

また、「リベリアのゴッドファーザー」といわれる人物は、リベリアのメジャーな木材会社を2つ所有し、かつ、国内の森林を保護・監視する政府機関、Forestry Development Associationの理事を兼任しているというから、不法取引を止めるの難しいようだ。

ここでも紛争から利益を得るのはひと握りの人々だけなのである。


2001/11/21


▼世界に広がる「血塗られたダイヤ」



紛争ダイヤに絡んでいるのはシエラレオネだけではない。

アンゴラ北東部のダイヤ産地ルンダ・ノルテでは、1997年以来、10万人に及ぶ不法業者が採掘を始めた。国連安全保障理事会は98年、不法ダイヤの輸出に対する制裁措置を発動したが効果はなく、翌年も同地域から1億5000万ドル相当のダイヤが産出された。

ヤースリー氏は「ヨーロッパの取引業者らが、大金を渡してダイヤを買い取り続けていたためだ。国内には現金があふれ、ひどいインフレが起きた。飲み物1本が10ドル、米1袋が500ドルにもなった」と語る。

世界のダイヤ市場の7割を握るデビアス社は、99年、アンゴラからのダイヤ購入停止を発表している。

コンゴでは97年5月、カビラ大統領が就任。翌年から、ルワンダ、ウガンダ両国の支援を受けた反政府勢力との紛争が続いている。争いの中心となっているのは、豊富なダイヤ資源を抱えるカサイ州だ。ヤースリー氏によると、カビラ大統領側は鉱山を守るため、周辺に7000人のアンゴラ軍兵士を展開した。鉱山を奪われれば、資金源が途絶えてしまうからだ。一方で、ルワンダとウガンダの間でも、残ったダイヤをめぐり争いが起きているという。

また、米同時テロを起こしたとされるアルカイダの財源の一部もダイヤモンドからきているという。



▼紛争ダイヤの流通



世界で売られているダイヤ製品の中では、指輪が79%を占める。「グローバル・ウィットネス」によれば、ダイヤ製品市場の規模は99年の数字で560億ドルにのぼり、その後も拡大の傾向にあるという。

シエラレオネやアンゴラ、コンゴからくる不法ダイヤの大半は、ダイヤ貿易の中心地であるベルギーのアントワープかイスラエルのテルアビブに運ばれる。その後、インドをはじめタイ、モーリシャス、米国など世界30カ国で加工さ
れてから、店頭に並ぶ。

ダイヤ消費国の筆頭に挙がるのは米国だ。日本はどうかわからないが、相当の消費をしているだろう。



▼撲滅に向けた世界の取り組み



ダイヤと戦争に対するメディアの注目や消費者のボイコットなどの努力により、今日、「あなたの購入したダイヤは紛争に関わっていませんよ」と示すために、ダイヤに「出産国証明書」を付けようという動きが出ており、ダイヤ業界もこれに賛成している。

今年4月にはベルギー、7月にはモスクワで、紛争ダイヤを一掃することを目指す国際会議が開かれ、世界から38カ国・機関が参加、年内をめどにダイヤの国際認証制度を設立する方針を示した。原産地証明のほか、輸出入国間の確認書や対象商品の写真の交換などにおいて国際基準を作る予定。

ただ、認証制度に拘束力または罰則を設けるかどうかは、自国のダイヤ関連産業が打撃を受けるかもしれないという懸念から消極的な国も多く、今後対立が表面化する恐れもある。

もちろん、世界に出回るすべてのダイヤにこうした証明書を添付することは技術的に難しい。が、それ以前に、アフリカに限らず途上国における紛争の多くは貧困から来ているのことを忘れてはいけない。ダイヤを装飾品として購入できてしまえる先進国と、毎日の食べ物にも困るような途上国との貧富の格差を是正するためには、世界の貿易の仕組みを変えていかなくてはならない。

その意味で、今回ドーハで開かれたWTO会議では、発展途上国への譲歩が目立った。とくにアメリカは、エイズ治療薬の特許保護の緩和にも応じるなど、今までにはない流れが生まれつつあるように思える。

まだまだ「紛争ダイヤモンド」締め出しの根本的な解決には至っていない。が、それでも、平和を信じる人たちの努力は少しずつ、しかし確実に、実になっていると信じたい。


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