地震、津波にハリケーン。はたまた突然の内戦勃発。そんなとき、国際的な人道支援として、食料、衣類、テントといった救援物資を届ける。迅速に届ける。必要な相手に、必要な時間に、必要な量が届けられなければならない。
時間のロスは命のロスだ。
しかし、残念ながら、救援物資はスムーズに届かないことが多い。
時間のロスは命のロスだ。
しかし、残念ながら、救援物資はスムーズに届かないことが多い。
2004年、アジアを大津波が襲った。
世界中から寄付が集められ、救援物資も用意された。
しかしそのとき、救援活動をしていた人たちのほとんどは、物資が今どこにあるか調べるためのトラッキング(追跡)ソフトを持たなかったという。せっかく物資はあるのに、それが届けられない。その結果、物資だけでなく、人の命さえもむだに失ってしまった。
宅急便を利用すれば、荷物がどこにあるかをインターネットで簡単に調べることができる時代になったにもかかわらず。
人道支援の国際NPOで、サンフランシスコに拠点を持つFritz Instituteによれば「救援物資の配送管理の基本的システムにおいて、人道支援を行う組織は、民間企業に20年遅れをとっている」という。
▼ウォルマートは政府より速かった
しかし、この状況は変わろうとしている。最近では、民間の宅配便会社が、人道的援助に参加するようになってきた。また逆に言えば、NGOなどの団体が、大企業的な考えと方法をとりいれるようになってきたのだ。
INSEADというフランスのビジネススクールの試算によれば、多くの人道援助を行う組織では、資金の3分の1が物資輸送にとられるという。またレポートの中では、
「災害時の輸送で、優れた組織なら、20〜25%経費を削減することができる。民間企業のほうがパフォーマンスに優れているという場合も少なくない」
と述べている。
今年、ハリケーン「カトリーナ」がアメリカを襲ったが、その被害地のひとつであるニューオリンズ郊外ルイジアナの町長はこう言った。
「ハリケーンのあと、国の連邦緊急管理庁より先に、ウォルマートの救援物資が届いた」
その後、ホワイトハウスはハリケーンに関する報告書の中で、今後奨励すべきこととしてこう書いている。
「FedEx(フェデックス)は世界中どこにでも正確な日時に荷物を運ぶことができる。被災地への支援物資の配送管理に民間業者の手法を採用すること」
▼赤十字の物資をFedExで
現在、民間の企業も人道的支援のプログラムを始めている。
国際宅急便で有名なアメリカのFedEx(フェデックス)は、1996年以来、アメリカ赤十字とパートナーを組んでいる。
同じくドイツの国際輸送会社、DHLは国連とのパートナーシップを深めている。独自のグローバルネットワークを生かし、今年4月には、アジアで災害対応チームを結成した。
またオランダの輸送会社TNTは国連のWFP(世界食糧計画)と連携し、現在60か国で活動を行っている。TNTの追跡システムを使えば、WTPは物資が今どこにあるかがわかるだけでなく、輸送車両の部品や燃料が交換必要かということまでわかる。
そして「人道的な物流戦略(humanitarian logistics)」という分野は産業となりつつある。
前述したFritz Instituteは2004年から毎年、この分野の国際会議を行っている。ジョージタウン大学では、同分野の専門のコースを持ち、マサチューセッツ工科大学では、物流業界のエンジニアを対象に人道支援についての専門クラスを設置した。今年5月には、ドバイでこれまでで最大となる人道的支援についての交易会が行われた。
Fritz Instituteの企業パートナーシップのリストを見れば、その中には、マイクロソフト、ヒューレットパッカード、ゼネラルモーターズをはじめ26の世界的有名企業の名前を見ることができる。
このように、民間企業とNGO、国、国連の間で、いろいろな連携が生まれている。
▼救援物資はCNNのカメラが来る村だけに?
もちろん、民間企業とNGOがまったく同じ方法を向いているわけではない。
「企業は『見返り』がほしいんです。プロジェクトが成功したとか、命が救われたとかいうことを、会社のイメージアップにつなげ、そして株式に反映させたいのです」
INSEADのLuk van Wassenhove教授はそう語る。そのような問題はTNTとWFPのパートナーシップで当初見られたそうだ。また、物資救援はできるだけ政治的・経済的利益から離れた者がするべきだと、教授は主張する。
「救援物資を運ぶ企業は、輸送が楽で、CNNのカメラが来る村にだけに物資を届け、本当にその物資を必要としている場所には届かない可能性がある」
▼スーダンに導入された最先端のコンピュータ・モデル
それでも、これまででもっとも大規模といわれるTNTとWFPのパートナーシップによる成果は見逃せない。
たとえば、内戦に20年も苦しむスーダンで、TNTはあるコンピュータ・モデルを作った。各地域の状況に合わせ、道路、鉄路、水路、空路、それぞれのコストと輸送能力を比較して、もっとも適したルートをはじき出すのである。
また輸送ルートのインフラ整備にはお金がかかるが、長期的に見れば輸送がスムーズになることによって、燃料や食糧が節約できるという利益がある。このシステムを使えば、そのインフラ整備にかかる利益とコストをも計算できるのである。
このシステムのおかげで、オランダ企業であるTNTは、オランダ政府を説得し、20キロの道路を修復するのに122万ドルの拠出が決まった。この工事は現在進行中で、WFPは毎年50万ドルが節約でき、初年度の支出をわずか2年でカバーできるという。
◆References:
●Flitz Institute
http://www.fritzinstitute.org/
●FedEx and American Red Cross(FedEx社ホームページ)
http://www.fedex.com/us/about/responsibility/community/
redcross.html?link=4
●TNT partnership with WFP(TNTホームページ)
http://group.tnt.com/wfp/
●United Nations signs disaster management partnership with DHL(UNDPホームページ)
http://un.by/en/undp/news/world/19-12-05-02.html
●United Nation signs partnership with DHL(DHLホームページ)
http://www.dpwn.de/dpwn?skin=hi&check=&lang=
de_EN&xmlFile=2004720
●ハリケーン・カトリーナ通過後の米国郵便・ロジスティクス大手各社の対応
(国際通信経済研究所(RITE)、レポート『世界の物流と金融』2005/9)
http://www.rite-i.or.jp/cyousa/report_17nen_no2.pdf
●TPG:国連食料機関とのパートナーシップで、飢餓解消へ本業のノウハウを提供
(地球・人間環境フォーラム、レポート『開発途上地域における企業の社会的責任』2005/3)
http://www.gef.or.jp/report/CSRasia2005/CSR_in_ASIA.pdf
●Relief when you need it (Newsweek, 2006/9/11)
●ホワイトハウス、カトリーナへの対応を検証した報告書を発表/災害対策計画の見直しを促す
(ワシントンポスト、2006.2.24)
世界中から寄付が集められ、救援物資も用意された。
しかしそのとき、救援活動をしていた人たちのほとんどは、物資が今どこにあるか調べるためのトラッキング(追跡)ソフトを持たなかったという。せっかく物資はあるのに、それが届けられない。その結果、物資だけでなく、人の命さえもむだに失ってしまった。
宅急便を利用すれば、荷物がどこにあるかをインターネットで簡単に調べることができる時代になったにもかかわらず。
人道支援の国際NPOで、サンフランシスコに拠点を持つFritz Instituteによれば「救援物資の配送管理の基本的システムにおいて、人道支援を行う組織は、民間企業に20年遅れをとっている」という。
▼ウォルマートは政府より速かった
しかし、この状況は変わろうとしている。最近では、民間の宅配便会社が、人道的援助に参加するようになってきた。また逆に言えば、NGOなどの団体が、大企業的な考えと方法をとりいれるようになってきたのだ。
INSEADというフランスのビジネススクールの試算によれば、多くの人道援助を行う組織では、資金の3分の1が物資輸送にとられるという。またレポートの中では、
「災害時の輸送で、優れた組織なら、20〜25%経費を削減することができる。民間企業のほうがパフォーマンスに優れているという場合も少なくない」
と述べている。
今年、ハリケーン「カトリーナ」がアメリカを襲ったが、その被害地のひとつであるニューオリンズ郊外ルイジアナの町長はこう言った。
「ハリケーンのあと、国の連邦緊急管理庁より先に、ウォルマートの救援物資が届いた」
その後、ホワイトハウスはハリケーンに関する報告書の中で、今後奨励すべきこととしてこう書いている。
「FedEx(フェデックス)は世界中どこにでも正確な日時に荷物を運ぶことができる。被災地への支援物資の配送管理に民間業者の手法を採用すること」
▼赤十字の物資をFedExで
現在、民間の企業も人道的支援のプログラムを始めている。
国際宅急便で有名なアメリカのFedEx(フェデックス)は、1996年以来、アメリカ赤十字とパートナーを組んでいる。
同じくドイツの国際輸送会社、DHLは国連とのパートナーシップを深めている。独自のグローバルネットワークを生かし、今年4月には、アジアで災害対応チームを結成した。
またオランダの輸送会社TNTは国連のWFP(世界食糧計画)と連携し、現在60か国で活動を行っている。TNTの追跡システムを使えば、WTPは物資が今どこにあるかがわかるだけでなく、輸送車両の部品や燃料が交換必要かということまでわかる。
そして「人道的な物流戦略(humanitarian logistics)」という分野は産業となりつつある。
前述したFritz Instituteは2004年から毎年、この分野の国際会議を行っている。ジョージタウン大学では、同分野の専門のコースを持ち、マサチューセッツ工科大学では、物流業界のエンジニアを対象に人道支援についての専門クラスを設置した。今年5月には、ドバイでこれまでで最大となる人道的支援についての交易会が行われた。
Fritz Instituteの企業パートナーシップのリストを見れば、その中には、マイクロソフト、ヒューレットパッカード、ゼネラルモーターズをはじめ26の世界的有名企業の名前を見ることができる。
このように、民間企業とNGO、国、国連の間で、いろいろな連携が生まれている。
▼救援物資はCNNのカメラが来る村だけに?
もちろん、民間企業とNGOがまったく同じ方法を向いているわけではない。
「企業は『見返り』がほしいんです。プロジェクトが成功したとか、命が救われたとかいうことを、会社のイメージアップにつなげ、そして株式に反映させたいのです」
INSEADのLuk van Wassenhove教授はそう語る。そのような問題はTNTとWFPのパートナーシップで当初見られたそうだ。また、物資救援はできるだけ政治的・経済的利益から離れた者がするべきだと、教授は主張する。
「救援物資を運ぶ企業は、輸送が楽で、CNNのカメラが来る村にだけに物資を届け、本当にその物資を必要としている場所には届かない可能性がある」
▼スーダンに導入された最先端のコンピュータ・モデル
それでも、これまででもっとも大規模といわれるTNTとWFPのパートナーシップによる成果は見逃せない。
たとえば、内戦に20年も苦しむスーダンで、TNTはあるコンピュータ・モデルを作った。各地域の状況に合わせ、道路、鉄路、水路、空路、それぞれのコストと輸送能力を比較して、もっとも適したルートをはじき出すのである。
また輸送ルートのインフラ整備にはお金がかかるが、長期的に見れば輸送がスムーズになることによって、燃料や食糧が節約できるという利益がある。このシステムを使えば、そのインフラ整備にかかる利益とコストをも計算できるのである。
このシステムのおかげで、オランダ企業であるTNTは、オランダ政府を説得し、20キロの道路を修復するのに122万ドルの拠出が決まった。この工事は現在進行中で、WFPは毎年50万ドルが節約でき、初年度の支出をわずか2年でカバーできるという。
◆References:
●Flitz Institute
http://www.fritzinstitute.org/
●FedEx and American Red Cross(FedEx社ホームページ)
http://www.fedex.com/us/about/responsibility/community/
redcross.html?link=4
●TNT partnership with WFP(TNTホームページ)
http://group.tnt.com/wfp/
●United Nations signs disaster management partnership with DHL(UNDPホームページ)
http://un.by/en/undp/news/world/19-12-05-02.html
●United Nation signs partnership with DHL(DHLホームページ)
http://www.dpwn.de/dpwn?skin=hi&check=&lang=
de_EN&xmlFile=2004720
●ハリケーン・カトリーナ通過後の米国郵便・ロジスティクス大手各社の対応
(国際通信経済研究所(RITE)、レポート『世界の物流と金融』2005/9)
http://www.rite-i.or.jp/cyousa/report_17nen_no2.pdf
●TPG:国連食料機関とのパートナーシップで、飢餓解消へ本業のノウハウを提供
(地球・人間環境フォーラム、レポート『開発途上地域における企業の社会的責任』2005/3)
http://www.gef.or.jp/report/CSRasia2005/CSR_in_ASIA.pdf
●Relief when you need it (Newsweek, 2006/9/11)
●ホワイトハウス、カトリーナへの対応を検証した報告書を発表/災害対策計画の見直しを促す
(ワシントンポスト、2006.2.24)
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宅配会社が21世紀の人道支援を変える!?