2002/03/06
長年中立を保ってきたスイスで最近、国連に加盟するかどうかを問う住民投票
が行われた。
反対派は世界の機構の中に入ることにより、自国の主権が弱まる
ことを懸念している。スイス以外でも国際化の波に呑み込まれ、自国の主権が失われることを心配する国は多い。
だが、自ら進んで主権を手放す国も存在するのだ。
その大きな理由のひとつはお金。冷戦の時代、発展途上国は米ソどちらかの肩を持つことにより、多額の経済支援を受けることができた。日本も、外交や安全保障などでアメリカにある程度主権を譲り、そのかわり経済を発展させてきた。だから、小国が金を引き換えに主権を売ることは新しいことでもない。
しかし、「市場」は近年伸びつつある。1990年に159カ国だった国連加盟国は、この10年の間に30以上も増えた。これら新加盟国は、キリバチ、
リヒテンシュタイン、マーシャル諸島、ナウル、パラウ、ツバルなど、みな人
口10万人以下の小さな国ばかり。
小国のため、経済の世界化の中で競争していくのは大変だ。また、この中には地球温暖化で、将来海に沈むといわれる島国もある。
弱肉強食のグローバリゼーションを生き抜いていくため、これらの国々は「国を売る」新しい手段を考え出した。
▼新手の経済支援?
買い手の方の需要は増えている。
例えば、日本は世界から鯨を捕り過ぎと非難
される中で、国際捕鯨委員会(IWC)の票決を動かすために、IWCに加盟
している小国を「買収」しているといわれる。
これらの国々に日本は毎年、技術支援として、毎年100億円以上を提供しているという。
台湾は、発展途上国に経済援助をし、自らを「国家」として認めてもらうため
精を出している。中国はそれに対抗して「一つの中国」を認めさせるため援助
をする。両陣営の援助合戦は今のところ、中国側に軍配が上がっているようだ。
▼たなからぼたもち
主権を購入するのは何も政府だけとは限らない。
インターネットの世界では、243全ての主権のある国と地域ごとにCCTLD(国別トップドメイン)が割り当てられている。日本なら.jp、台湾なら.tw
といったぐあいだ。
【国別ドメインネーム一覧】
http://www.eastcourt-rokko.com/domain/cctld.html
ドメインは全く元手がかけずにお金を徴収できることから、税収の乏しい小さ
い国にとって手っ取り早い収入源となっている。
大平洋上の島国、ツバルはカリフォルニアのベンチャー企業、dotTVに自国ド
メイン「.tv」を売った。
dotTVはまず最初に、ツバルのGDPの2倍に当たる1800万ドル(約24億円)を出し、以後10年にわたり毎年400万ドル
(約5億3000万円、払う契約を結んだ。国民一人当たりにすれば、年間
400ドル(約5万3000円)になる。
ツバルは、この資金で2000年には189番目の国連加盟を果たした。
ニウェも太平洋の小さな島国で、人口1750人のうち電話は100回線だけ。
しかし、ニウエのドメインは「.nu」。北欧のいくつかの言語で「now(今)」
を意味することから、ドメイン販売で大金を手に入れた。
このお金で、ニウェ は現在、国民全員に高速のネット回線を無料で提供している世界唯一の国にな
っている。
モルトバのドメインは「.md」。medicalの略ということで、医療関係の企業から購入の需要があり、同じく潤っている。
みなさんもひとつ国を買ってみてはいかがでしょう^0^
==>To be
continued...
◎References:
--Dotos on the map. (2000,
September. 14) Far Eastern Economic Review. volume 163, page 42
--Pacific
isle finances UN membership via the Internet Forget the dotcom boom. (2000,
September 5.) Christian Science Monitor. page 7
--Sinking islands, vanishing
worlds. (2000, Summer) Earth Island
Journal. volume 15, page44
--Tiny
Tuvalu Profits From Web Name. (2000, September 4) New York Times, page C2
2002/03/11
前号では「主権を売る」ことによって、大金を手に入れた国の例をいくつか紹介した。しかし、良いことばかりでもなさそうだ。
▼主権のブラックマーケット
大小80の島々からなる南太平洋の国家バヌアツは人口18.2万人。
現地の言葉で「われわれの土地」という意味の国名を持つバヌアツは、国の電話エリアコードを米国のフォーンセックス会社に売却した。 短い電話番号でバヌアツに国際電話がかけられるようになるため、フォーンセ ックス利用者は、知らず知らずのうちに国際電話をかけ、あとで多額の請求書があとで送られてくる。
国が性産業を支援しているとして、バヌアツは世界から非難されている。
同じく世界から非難されているのは、バチカン、モナコに次いで世界で3番目に小さな領土を持つ独立国、ナウル。
赤道以南約40kmにあるこの太平洋の珊瑚の島は、マネーランダリング(資金浄化)の楽園でもある。1998年には、ロシアマフィアの裏金約700億ドル(約9兆3千万円)が流れた。マネーランダリングは、麻薬カルテル、組織犯罪、テロリズム、腐敗政府の資金源だ。
これに対し、昨年12月、OECD(経済協力開発機構)が管轄下のFATF (Financial Action Task Force on Money Laundering:金融活動作業部会)加盟国は、ナウルに対して制裁措置を発動した。
制裁によってナウルが受ける経済的打撃は、違法で儲けた資金額を上回ると予想されている。
▼ただより高いものはない
合法であろうと、非合法であろうと、小国が主権を売ることは、元手なしに投資、経済援助、ハイテク技術を手に入れられる手っ取り早い方法のようだ。
しかし、この「手っ取り早い方法」が自立した経済の基盤をつくるかといえば、疑問が残る。
農業や観光業と違い、「主権」は再生することのできない資源。
一度売ったら、 買い戻すのは、たやすいことではない。
=おわり
◎References:
--Sovereignty for Sale. (2001, Sep/Oct) Foreign Policy. Page: 76
--Tiny Pacific Island Is Facing Money-Laundering Sanctions. (2001, Dec 6) New York Times. Page: A5
--金融庁:特定金融情報室 http://www.fsa.go.jp/fiu/fiu.html
この改行は必要→
グローバリゼーションの波の中、自国の主権が失われることを心配する国は多い。